四国第35番札所「清滝寺」からの眺めは美しい。小高い山々が連なり緑の土佐平野が広がっている。仁淀川の流れ、その向こうに太平洋が見える。ここに立つといつも思い出すことがある。
四国遍路の霊験話である。遍路道でお大師さんと出会った、病気が治った、啓示を受けた、願いが叶った…などなど。
第36番「青龍寺」を経て第37番「岩本寺」から第38番「金剛福寺」に向かう途中に「真念庵」がある。江戸時代末、真念法師が記した四国遍路の「功徳記」の一部を意訳してみます。
空海の真言密教は、この大宇宙そのものを大日如来の活動であると観る秘奥の教えである。諸仏はよくこのことを内に心得ておられる。
四国の中、大師の遺跡を巡礼する遍路は、絶え間なく続いている。
大勢の人々が連なり重なって、種々の願い事を祈り、霊異を感じ、山も川も、雨や風をもいとわない。霧の中に宿り、石を枕として、苦しみや辛さを忘れる。
これはただ大師の御徳を尊ぶことによって、仏の御恵みを如実に受け、自然に勇気が湧き上がって来るからである。
遍路について、大師の言葉を伝える人は言う。
「身体を高野山の樹の下にとどめ、魂を未来仏(マイトレイヤー)の住まう都率天の雲の上に遊ばしめ、所々の遺跡を検知して、日々来臨することを欠かさない。」
大師は四国霊場へ日々その姿を現す。八十八ヶ所の内、いづれにてか「大師に直に会った」というのは、このことからである。
(真念庵に伝わる伝説)
足の立たなかった人が立って歩くようになった
それを目の見えなかった人が見たんだと
言葉をしゃべれなかった人が語った
そのことを耳の聞こえなかった人が聞いた……お四国のさた
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